JR東海と積水化学 ペロブスカイト太陽電池搭載の防音壁

JR東海と積水化学工業は12月18日、ペロブスカイト太陽電池を搭載した防音壁の共同開発を進めることで契約を結んだと発表した。これは日当たりが良く、東海道新幹線沿線に設置されている防音壁に、薄くて軽量で、柔軟なフィルム型ペロブスカイト太陽電池を搭載しようというもので、今回試作機を開発した。今後実用化に向けてJR東海の小牧研究施設等で実証実験を行う。

出光興産など 建設現場で次世代バイオ燃料の実証実験開始

出光興産(本社:東京都千代田区)、大林組(本社:東京都港区)、松林(本社:京都府宮津市)の3社は12月10日、大林組は建設現場で使用する油圧ショベル等建設機械および発電機向け燃料として、軽油代替で高いCO2削減効果のあるバイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル」(以下、IRD)を使用する実証実験を11月中旬から開始したと発表した。出光興産はこの実証結果を踏まえ、2025年初から新商品としてIRDを販売開始する予定。IRDは、植物由来の廃食油などを原料として製造されるバイオ燃料。

太陽誘電と東北大 早期の社会実装へ燃料電池を共同研究

太陽誘電(本社:東京都中央区)は12月9日、東北大学と共同で燃料電池などの高温エネルギー変換機器の研究を始めたと発表した。水素と酸素で発電し二酸化炭素(CO2)を排出せず、発電効率が高い固体酸化物形燃料電池(SOFC)などが対象。10月1日に共同研究部門をすでに立ち上げており、早期の社会実装に向け、積層セラミックコンデンサー(MLCC)で培った太陽誘電の製造技術と、東北大の解析技術を使い開発スピードを加速する。研究期間は2027年9月までの3年間。

KDDI 30年に全自動配送実現 ドローン・ロボ・車を一体制御

KDDI(本社:東京都千代田区)は12月6日、ドローン、配送ロボット、自動運転車を組み合わせた全自動の配送技術を2030年に実用化すると発表した。異なる機械をまとめて一体制御するシステムを開発、駆使することで実現する。
同日、千葉県君津市内でドローンや配送ロボットなどを一体的に運用する制御システムの実証実験に成功した。実験には高精度地図を手掛けるアイサンテクノロジー(本社:名古屋市)や自動運転技術開発のティアフォー(本社:名古屋市)、KDDIスマートドローン(本社:東京都千代田区)、KDDI研究所(本社:埼玉県ふじみ野市)などが参加した。

旭化成 EC, DMC技術ライセンスした中国プラントが運転開始

旭化成(本社:東京都千代田区)は12月5日、高純度エチレンカーボネート(EC)および高純度ジメチルカーボネート(DMC)を技術ライセンスした中国Jiangsu Sailboat Petrochemical Co.,Ltd.(本社:江蘇省連雲港市、以下、Sailboat)の新プラントが11月に商業運転を開始したと発表した。
これらの高純度カーボネートは、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池(LiB)の電解液溶剤に用いられており、二酸化炭素(CO2)を主原料とする大型高純度カーボネート類生産技術の確立とその工場の稼働は、CO2を化学製品の原料として消費する機会を大きく広げることにつがる。このライセンス技術は原料の約50%がCO2であり、年間数万トンのCO2を消費・吸収する技術として世界中から注目されている。

住友ファーマ iPS網膜シート 25年度米で移植 臨床試験

製薬大手の住友ファーマ(本社;大阪市)は11月29日、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から光を感じる網膜のシートをつくり、目の難病「網膜色素変性症」に患者に移植する臨床試験を米国で開始すると発表した。
米マサチューセッツ州の病院と協力し、網膜シート(直径約1ミリ)を患者12人に移植。国内の研究よりも細胞数を増やし、安全性や視機能の改善などの有効性を確認する。視細胞を含むシートを国内で作製して米国に空輸し、2025年度に1例目の移植を目指す。
網膜色素変性症は、暗いところでものが見えにくくなったり、視野が狭くなったりする難病。光に反応して神経に情報を伝える「視細胞」が減少して発症する。国内に約3万人、米国では約8万人の患者がいると推定されている。

JR東海 カーボンニュートラル実現へ水素動力車両開発推進

JR東海は11月26日、政府の2050年カーボンニュートラル政策に呼応、同社が推進している取り組みの一環として、軽油を燃料とする従来の気動車に代わる、水素を燃料とした「水素動力車両」の開発状況を明らかにした。この水素動力車両はHC85系ハイブリッドシステムをベースとし、動力源として燃料電池と水素エンジンを検討している。
今回、水素エンジンハイブリッドシステムの試作機が完成した。これは産業用のディーゼルエンジンをベースにiLabo(本社:東京都中央区)が開発した水素エンジンとJR東海のHC85系で使用している発電機、車両制御装置、蓄電池を組み合わせたシステム。水素エンジンは高い耐久性と出力密度、および高負荷域での高い効率が期待でき、また燃料電池と比較して低い水素純度でも運転できる特長がある。

興和 ミノムシの糸を世界で初めて高強度の繊維製品化

医薬品メーカーの興和(本社:名古屋市)はこのほど、ミノムシが吐く糸を使った繊維を世界で初めて製品化したと発表した。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と組み合わせて強度を高め、スポーツ用品や自動車や航空機ののボディなどでの活用展開を目指す。
ミノムシが吐く糸はクモの糸を上回り、自然界で最も強度が高いとされる。同社は2017年から農業・食品産業技術総合研究機構と共同研究を続け、実用化を検討してきた。今回、人工飼育のミノムシに糸を吐かせ、シート状の繊維製品をつくる手法を確立。シートをCFRPに貼り合わせることで、より衝撃に強く、壊れにくくなる。

荏原 ロケット 電動ターボポンプで極低温流体試験に成功

荏原製作所(本社:東京都大田区)は11月8日、2022年から開発を進めているロケットエンジン用電動ターボポンプで、2024年9月にに実施した液体窒素による性能試験に成功したと発表した。今回、試験を実施した電動ターボポンプは、ロケットエンジンに液体メタンを燃料として供給することを想定。試験は9月6〜13日、宮城県のJAXA角田宇宙センター内の極低温ターボポンプ試験設備で実施された。
実際のロケットエンジンの燃料と同様に極めて低い温度の液体窒素(−196℃)を作動流体として使うことで、低温環境独特の課題に対する設計・製造条件を確認した。この試験の成功は荏原が目指す宇宙への低コストで自由度の高い輸送手段の確立に向けた大きな第一歩としている。

光量子計算機 年内稼働へ 国内初 室温で高速度 理研,NTTなど

理化学研究所とNTTなどのチームは、次世代の計算機「光量子コンピューター」を年内にも稼働させると発表した。国内では初めて。
量子コンピューターは、ミクロの世界に特有な物理法則「量子力学」を利用して計算を行う。日本では昨年、理研や富士通、大阪大学などが相次いで国産の量子コンピューターを稼働させている。ただ、いずれも計算を実現させる素子「量子ビット」に超伝導回路を使う方式で、極低温の冷凍機内で稼働させる必要があった。
今回の光量子コンピューターは室温で稼働可能で、消費電力を抑えることができ、「光」を使うため計算速度が速く、高度な計算処理ができるという。インターネットのクラウドを介して、共同研究を行う大学や研究機関の研究者が利用できるとしている。

川崎重工 水素3割混焼の大型発電エンジン安定運転に成功

川崎重工業は10月29日、工場内に電力を供給する大型ガスエンジンの燃料に、燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を3割混焼して安定的に発電することに成功した大型発電エンジンを公開した。
同社の神戸市の自社工場の設備は、燃料の3割を都市ガスから水素に置き換えて発電することができる。担当者が制御室で操作すると3分ほどで全燃料に占める水素が3割まで上昇。大型混焼発電エンジンの安定運転を実証した。
工場の建物の横に都市ガスと水素を混ぜる設備を設置したほか、着火しやすい特性のある水素が漏れた場合に、いち早く検出できるよう検知器を設置している。
同社のよると、水素を3割混ぜることで都市ガスだけの場合に比べて、年間のCO2排出量を420世帯分に相当するおよそ1,150削減できるとしている。

岩谷産業 国内初の旅客用水素燃料電池船「まほろば」完成

岩谷産業は10月24日、2025年大阪・関西万博で会場の夢洲(所在地:大阪市此花区)とユニバーサルシティポート(同北区中之島)の約11kmを結ぶ交通機関に一つとして使われる、水素燃料電池船「まほろば」が完成したと発表した。まほろばは、全長約30mで、定員は150人。船内に水素タンクを備え、空気中の酸素を化学反応させることで発電して動く仕組み。航行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代の船舶だ。旅客用の水素燃料電池船は国内初という。
万博時、使用される際、運航は京阪グループの大阪水上バスに委託する。

トヨタ, 岩谷産業 液体水素を車に充填 既存インフラで初実証

トヨタ自動車と岩谷産業は10月24日、岩谷産業が運営する愛知県刈谷市の水素ステーションで、水素を液体の状態で車に充填する国内初の実証実験を公開した。水素社会を見据え、既存のインフラで進める水素自動車普及策の一環。
既存の水素ステーションは、水素を気体の状態で充填することが前提。今回、専用設備を開発して液体でも充填できるようにした。水素の用量保管・輸送は気体→液体化が喫緊の課題だけに、既存のステーションでも液体水素を充填しやすくすることは即、水素エンジン車の普及につながるとみられる。

中国のCATL 航続距離最長400kmのPHV向け新型電池を発表

車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は10月24日、北京市内で新製品発表会を開き、プラグインハイブリッド車(PHV)向けの新型電池を開発したと紹介した。この新型電池の航続距離は最長400kmで、280km走行分の充電をわずか10分で完了できるという。

ノーリツ 豪州で水素100%燃焼家庭用給湯器の実証実験

ノーリツ「(本社:神戸市)は10月22日、グループ会社のDux Manufacturing Ltd(所在地:オーストラリア、以下、Dux)が、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みをを加速させるため、西オーストラリアを中心としたエネルギーインフラ会社、ATCO Gas Australia Pty Ltd(以下、ATCO)と共同で、2024年12月から水素100%燃焼の家庭用給湯器の実証実験を開始すると発表した。
ノーリツ、Dux、ATCOの3社は協定書を締結。ノーリツが開発した水素100%燃焼の家庭用給湯器をATCOの水素住宅に導入し、2024年12月から約2年間、日常生活での稼働状況を検証する。Duxは実験中の機器メンテナンスを担う。

アステラス 英バイオ企業から認知症治療薬の開発権取得

アステラス製薬(本社:東京都中央区)は10月8日、英国バイオ企業、アビアドバイオ(本社:英国・ロンドン)との間で認知症向けの遺伝子治療薬候補を開発・商業化できる権利を取得することで契約を締結したと発表した。これによりアステラスはアビアドバイオの新薬候補、「AVB-101」を全世界で開発・商業化する権利を得る。現在、初期段階の臨床試験(治験)に入っている。
今回の契約によりアステラスは、まず一時金として最大5,000万ドル(約73億円)を支払う。さらに開発などの進捗に応じて最大21.8億ドルを支払う可能性がある。

トヨタ eVTOL開発の米ジョビー社に5億㌦追加出資

トヨタ自動車は10月2日、電動垂直離着陸機(eVTOL、空飛ぶクルマ)を開発する米ジョビー・アビエーション(以下、ジョビー社)に5億ドルを追加出資することで合意したと発表した。eVTOLの研究開発段階から実用化に向けた取り組みを加速していく。今回の追加出資により、トヨタのジョビー社への投資額は2020年1月の3.94億ドルと合わせ累計8.94億ドルとなる。

第一工業製薬 広島大と共同研究でCNF複合磁性粒子を開発

第一工業製薬(本社:京都市南区)は10月2日、国立大学法人広島大学(所在地:広島市)との共同研究でセルロースナノファイバー(CNF)複合磁性粒子の開発に成功したと発表した。研究用試薬や診断薬の開発への展開を目指し、11月からサンプルワークを開始する。

千代田化工 植物による有用タンパク質の量産技術開発へ

千代田化工建設(本社:横浜市西区)は10月1日、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のカーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術開発事業で、植物による有用タンパク質を生産する、新規基盤技術の実証設備の建設を進めている。これは、複雑で高度な修飾を必要とする機能性タンパク質を、植物(タバコ葉)を用いて生産する技術で、安価かつ安定的に供給するシステムを開発するもの。この実証設備を国内初の「植物バイオファウンドリ」として機能させる計画。

万博”空飛ぶクルマ” 全事業者が商用運航見送り, デモ飛行のみ

2025年4月13日開幕の大阪・関西万博で運航が予定されている「空飛ぶクルマ」について、博覧会協会から指定を受けている4陣営の運航事業者が、旅客を乗せて飛行する商用運航を見送ることが分かった。機体の安全性の審査に時間がかかるなどとしており、日本航空、ANAホールディングスと米ジョビー・アビエーション、丸紅、スカイドライブの4陣営すべてがデモ飛行となる。空飛ぶクルマの商用運航は、今回の万博の目玉の一つとして実現が期待されていた。